愛知県半田の地でこの冬、見事復活を遂げた酒蔵があることを皆様ご存知ですか?酒蔵の名は「伊東株式会社」。そこで醸されるお酒の名は『敷嶋』。22年間の空白期間を経て、もともと蔵があった場所である愛知県半田市亀崎の地でこの冬から酒造りを再開させました。
当時の蔵の名前は「伊東合資会社」。創業1788年の老舗蔵でした。ピーク時には約8,000石(一升瓶換算:約800,000本)もの年間生産量を誇るなど、一時代を築いた銘醸蔵でした。日本酒の製造販売のみならず、味噌や醤油の製造販売や、薬屋、銀行、保険、不動産などを営む地元の名家として名を轟かせていました。わかりやすく言うところの“財閥”ですね。しかし、清酒需要の低下や手掛けていた卸会社の不調が重なり、2000年(平成12年)に200年超の歴史に幕を閉じ、酒蔵は廃業となりました。
現蔵元の伊東さんは当時まだ中学生。酒蔵の廃業に実感を感じることなく、日々を過ごしていたそうです。そのまま大学まで卒業し、卒業後はNTTドコモに就職。順風満帆な社会人生活を送っていた最中、伊東さんが30歳の頃、祖父がなくなりました。お通夜の前日、実家に残っていた『敷嶋』を見つけ、祖父の死を偲びながら飲んでみたところ、これがまたたまらなく美味しかったそうです。この1杯をきっかけに、『敷嶋』を造ってきた歴史から今後のことについて自問自答を繰り返し、ついに再起を決意。
愛知県の銘醸蔵「長珍酒造」さん、三重県の「福持酒造場」さんにて酒造りの修行を重ね、ノウハウを学びます。「福持酒造場」さん在籍時には、蔵の再建よりも先に『敷嶋』銘柄のお酒を自分で仕込みました。名目上は委託醸造ですが、念願の『敷嶋』銘柄の復活は見事叶いました!しかし伊東さんはまだまだ歩みを止めません。これはあくまでも「創業の地、愛知県半田市亀崎で酒蔵を復活させる」ことを目指しての過程と捉えた上で、委託醸造での『敷嶋』は『0歩目』と『0.5歩目』といった名前でのリリースとなりました。
日本酒造りの修行~『敷嶋』銘柄の復活まで、スムーズに進んでおりましたが、ここで大きな問題が一つ。それは「清酒の醸造免許」です。日本酒を醸すためには、日本酒の醸造免許というものが必要となります。旧伊東合資会社は廃業の際にこの醸造免許を返納していたため、現在の伊東さんには一番大切な免許がない状態だったのです。このままでは『敷嶋』はおろか、日本酒すら造れないのです。じゃあ免許とればいいじゃん!というわけにはいかず、現在の日本では需要と供給のバランスを鑑みて、国内販売を目的とした日本酒の醸造免許は新規での発行はなされておりません。となると、醸造免許を持っている酒蔵から免許を譲り受け、その免許を移転するしか方法がありません。といっても譲渡を検討している酒蔵や免許の移転を許可してくれる酒蔵など簡単に見つかるはずもなく、3年の月日が流れます。この間、「福持酒造場」さんでの『敷嶋』復活が話題となり、お酒がつなぐご縁により、免許を譲渡してくれる酒蔵さんと出会い、創業の地で酒造りを無事行えることとなりました。
免許の問題をクリアし、あと残すは酒蔵復活のための醸造設備の準備です。以前に売却した製造工場の買い戻しや醸造機器の手配、冷蔵庫の準備などやらなければいけないことは多いのですが、酒蔵復活がもう目の前まで来ているということもあり、ここでも伊東さんは歩みを止めません。土地を担保に融資を受け、必要な機器類を全て用意し、ついに2021年冬に稼働を開始しました。本当の意味での『敷嶋』復活であり、酒蔵が復活した瞬間です。
こんな映画のような壮大なストーリの蔵元、応援しないわけにはいかないでしょう!!ということで、KOBAでも『敷嶋』の取扱いがスタートします\(^^)/ 今回入荷したのは、創業の地で醸す最初の1本『敷嶋 1歩目 特別純米 無濾過生原酒』。今回は1.8L規格のみ、KOBA発注数の1/3の入荷となりました。。今後は特別純米や純米大吟醸、純米吟醸など定番酒も順次リリース予定とのことです。今一番の大注目銘柄『敷嶋』、ぜひお楽しみください!!